不動産登記に強力なパワーがある国とない国
世界の不動産登記制度は、登記に強力な効力(公信力)を認めるドイツ・スイス等の法制と、登記に公信力を認めず対抗要件(権利を主張できるか否かの話)にとどめる日本・フランス等の法制に大別されます。
本稿は以下の用語を押さえておくと読みやすいと思います。
- ・公信力
- 公信力とは、役所の記録や登記などを信じて取引した人を法律が保護する力のことです。公信力がある制度では、記録が実際と違っていても、その記録を信じた人が守られます。日本の登記制度には公信力はありません。
- ・公示力
- 不動産登記や商業登記において、権利関係や取引上の重要な事項を登記簿(登記記録)に記載し、誰でも閲覧・確認できる状態にして、社会一般に広く知らしめる力のことです。日本の登記簿は誰でも見ることができますので、日本の登記制度には公示力があることになります。
- ・対抗要件
- 自分の権利を第三者に主張するために必要な条件のことです。例えば不動産では、所有権を第三者に主張するには登記が必要で、この登記のことを対抗要件と呼びます。
1.各国における不動産登記の効力の違い
- ・ドイツ、スイス
- 不動産登記および動産の占有の両方について、公信の原則を認めています。これは、真実の権利状態と異なる登記(不実の登記)が存在する場合でも、その公示を信頼して取引した者が公示どおりの権利を取得することを意味します。ドイツでは1794年のプロイセン州法以来の歴史的経緯を経て、現行ドイツ民法でもこの原則が継承されています。
- ・日本、フランス
- 動産の占有については公信の原則を認めますが、不動産の登記については公信の原則を認めていません。真実と異なる登記を信頼して取引しても、原則として権利は取得できません。ただし日本では、判例が民法94条2項の類推適用という構成を用いて、限定的に取引の安全を図るケース(真実と異なる登記を信頼した者が保護されるケース)があります。
2.不動産登記が物権変動において果たす役割
- ・ドイツ、スイス
- 形式主義、効力要件主義が採用されています。物権変動が生じるためには、当事者の合意に加えて、登記という一定の形式を具備することが必要です。すなわち、登記がなされなければ物権変動の効力そのものが生じない制度設計となっています。
- ・日本、フランス
- 意思主義・対抗要件主義が採用されています。物権変動は当事者の意思表示(合意)のみによって生じます。登記は、その権利変動を第三者に主張するための対抗要件として位置づけられています。
3.近年の日本の登記制度について
日本はフランス流の「公信力なし・任意登記」の立場を長く維持してきましたが、所有者不明土地問題の深刻化(2016年時点で九州本島を上回る面積が所有者不明と推計)を受け、大きな転換期を迎えています。
例えば、令和3年(2021年)の不動産登記法改正により、これまで任意であった相続登記(令和6年4月1日施行)や氏名・住所変更登記(令和8年4月27日までの政令で定める日までに施行)が義務化されました。
その目的は、登記申請の放置による「所有者不明土地」の発生を予防し、不動産登記情報の更新を促すことで、取引の安全と土地活用の円滑化を図る狙いがあります。また、日本において長年認められてこなかった不動産登記の「公信力」を将来的に議論、あるいは承認しうる実態的な基盤を構築する重要な意義を有しています。
4.まとめ
各国の不動産登記制度は、ドイツ・スイスに代表される「公信力を備えた厳格な形式主義」と、日本・フランスに代表される「合意を重視しつつ登記を対抗要件とする意思主義」に分かれています。日本は後者の立場ですが、近年の法改正により相続登記や住所変更登記の義務化へと舵を切り、公示機能の強化と所有者不明土地問題の解決に向けた現代的な制度構築を進めています。
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