雨の日の仕事
リリー・フランキーさんの『美女と野球』というエッセイ集のあとがきに、「太陽の日差しに微笑む人よりも、どしゃぶりの中を歩いている人に興味がある」という一節があります。
司法書士という仕事には「晴れの日の仕事」と「雨の日の仕事」があると感じています。
不動産売買や会社設立は、人生の晴れの日に立ち会う仕事です。一方で、後見申立て、自己破産、相続放棄。これらは、大体の場合、どしゃぶりの中を歩いているひとの隣に立つ仕事です。
保佐申立ての面談でお話ししたおばあちゃん。自分の子どもから虐待を受けた末に保護された方でした。そんな過去があるはずなのに、にこにこ明るくてかわいい人でした。
自己破産のご相談でお会いしたおねえさん。親族の死をきっかけに発症した双極性障害に悩まれている方でした。嵐が去るのをじっと待っているような印象を受けました。
母がようわからん大量の不動産を相続しそうで困っていた三児のパパさん。超多忙な仕事と育児の合間をぬって、相続放棄のお打ち合わせにきていただきました。
私自身暗い人間だからでしょうか。どしゃぶりの中で途方に暮れている人、あがいている人、闘っている人に興味があります。
雨はその人が選んで降らせたものではありません。あのおねえさんの双極性障害も、あのおばあちゃんが受けた虐待も、パパさんの母の頭上に降ってきた大量の不動産も、本人が「降らせてください」と頼んだものは一つもない。
ちょっと話はそれますが、統合失調症や双極性障害に罹患する人は、時代や地域を問わず、社会の中に一定の割合で存在し続けることが知られています。遺伝的要因が大きく、かつ生存のためには一見不利に働きそうな病なのに、なぜその形質は自然淘汰されずに残り続けるのか。はっきりした答えはまだ出ていないようです。
が、そうした病の形質は、人間の豊かな感受性や創造性を支える部分と分かちがたく結びついているのではないか、という見解があります。そうだとすれば、それは私たちの誰もが、少しずつ分かち持っているものなのかもしれません。
雨は誰の頭上にも降ります。なので、もし今雨が降っていないならそれは単なる偶然です。
わたしはもちろん雨を止めることはできません。できるのは、傘を差し出して濡れている人の隣を少しのあいだ一緒に歩くことくらいかなあと思います。
法テラスは、その傘のような制度であると思っています。びっしょびしょの人がひとまず雨宿りをして、次の一歩を考えるための傘です。
ただ、困ったことに、この傘は当の本人に知られていないことがままあるなあと思います。傘があることを知らなければ、雨が降ってきてもさすことはできません。
「こういうときは法テラスが使えますよー」と、濡れた手にそっと傘を握らせる誰かがいて、はじめて傘をさすことができる。傘の受け渡しをすること。私は、その役目を担う人でありたいと思っています。
誰かに傘を渡すためには、まずは雨の中に人がいることに気づかなければなりません。
だから私は、どしゃぶりの中を歩く人にこれからも興味を持ち続けたいと思います。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
読んでいただきありがとうございます。
本記事は神奈川県司法書士会の会誌の「法テラスと司法書士」という企画のために執筆した原稿を、一部修正して掲載しています。
遺言書作成、生前贈与、家族信託、成年後見、死後事務委任契約などの生前対策・終活から、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金・株式・保険等の相続手続き、相続放棄などの相続発生後の手続きまで。
ご相談は日吉司法書士事務所(横浜市港北区「日吉駅」徒歩3分)にお任せください。
初回相談60分無料。出張・オンライン相談歓迎。土日祝・夜間相談可能です。
日吉司法書士事務所のホームページはこちら
些細なことでも遠慮なくご相談ください
- ご相談は
何度でも無料 - 訪問・オンライン
相談歓迎 - 土日祝・夜間相談
(要予約)







