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障がいのあるお子さまの「親なきあと」問題——親が元気なうちにできる備え

障がいのあるお子さまがいるご家庭から、最も多くいただくご相談が「自分たちがいなくなった後、この子はどうなるのか」というお悩みです。

いわゆる「親なきあと」問題です。

日々の生活支援を担ってきた親が亡くなった後、お金の管理や各種契約、生活の見守りを誰がどう引き継ぐのか。

この備えは、親御さんが元気なうちにしかできません。

■ お金を残すだけでは解決しないことがある

「できるだけ多くの財産を残してあげたい」と考える親御さんは多いのですが、実は財産を残すこと自体よりも、「残した財産を誰がどう管理するのか」のほうが重要です。

判断能力に不安がある方がまとまった財産を相続すると、ご本人が適切に管理できなかったり、悪質な勧誘のターゲットになってしまったりするリスクがあります。

また「兄弟に全部任せる」という前提だけで準備を終えてしまうと、兄弟の生活状況が変わったときに支え切れなくなることもあります。

お金と、それを管理する仕組みは、必ずセットで考える必要があります。

■ 備え1:財産管理と身上監護の仕組みをつくる

ご本人の生活を支える仕組みとして中心になるのが、成年後見制度と家族信託です。

成年後見制度は、財産管理だけでなく、施設の入所契約や福祉サービスの利用契約といった「身上監護」まで担える点が強みです。

ご本人の判断能力がすでに不十分な場合は法定後見を利用します。

家族信託は、親が元気なうちに、信頼できる家族に財産の管理を託す契約です。

「親が亡くなった後は障がいのある子のために使い、その子も亡くなったら残りは別の親族へ」というように、二世代先までの承継先を決めておける点が大きな特徴です。

■ 備え2:特定贈与信託を活用する

特定贈与信託は、信託銀行等に財産を信託し、障がいのあるご本人の生活費や医療費を定期的に交付してもらう制度です。

特別障害者の方は6,000万円まで、それ以外の特定障害者の方は3,000万円まで贈与税が非課税になります。

信託は原則としてご本人が亡くなるまで続くため、長期にわたる生活資金の確保に向いています。

■ 備え3:心身障害者扶養共済制度(しょうがい共済)

保護者が掛金を納めることで、保護者が亡くなった後、障がいのある方に終身で年金が支給される公的な制度です。

1口で月額2万円、2口まで加入でき、最大で月額4万円が生涯支給されます。

加入できるのは加入時年度の4月1日時点で65歳未満の保護者に限られるため、検討は早いほうが選択肢が広がります。

お住まいの自治体の障害福祉担当窓口が窓口です。

■ 備え4:遺言は必ず用意しておく

司法書士として特にお伝えしたいのが、遺言の重要性です。

遺言がないまま親が亡くなると、相続手続きには相続人全員での遺産分割協議が必要になります。

しかしご本人に十分な判断能力がない場合、協議に参加できないため、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらわなければ手続きが進みません。

急いでいるときに、時間も費用もかかる手続きが追加で発生してしまうのです。

遺言で「どの財産を誰に渡すか」を決めておけば、この遺産分割協議そのものが不要になります。

あわせて遺言執行者を指定しておくと、手続きはさらにスムーズです。他のご家族の遺留分にも配慮しながら内容を組み立てることが大切です。

■ 備え5:親自身が元気でなくなる場合にも備える

見落とされがちなのが、「親が亡くなる前に、親の判断能力が低下する」ケースです。

親が認知症などで財産の管理や契約ができなくなると、お子さまのための資金を動かすことすらできなくなってしまいます。

親御さんご自身の任意後見契約や家族信託を準備しておくことで、この空白期間をつくらずに済みます。

お子さまの備えと親御さんご自身の備えは、両輪で考えておくとなお安心です。

■ 制度以外に残しておきたいもの

もうひとつ大切なのが、情報の引き継ぎです。

ご本人の障がいの特性や苦手なこと、かかりつけの医療機関、利用している福祉サービスと支援者の連絡先、日々の過ごし方の希望——こうした情報は、長年支えてきた親御さんの中にしかないことが多いものです。

ノートやファイルの形で書き残しておくだけでも、後を引き継ぐご家族や支援者にとって大きな助けになります。

制度の準備と並行して、少しずつ整理しておくことをおすすめします。

■ まとめ

親なきあとへの備えは、ひとつの制度で完結するものではありません。

遺言、信託、後見といった複数の仕組みを、ご家族の状況に合わせて組み合わせていくことになります。

さらに、制度以外にご家族しかできない情報の引継ぎも大切なことです。

そして、それらほとんどが親御さんの判断能力があるうちにしか準備できません。

日吉司法書士事務所では、遺言・家族信託・成年後見を通じた「親なきあと」の備えについてご相談を承っています。

何から考えればよいか分からないという段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

遺言書作成、生前贈与、家族信託、成年後見、死後事務委任契約などの生前対策・終活から、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金・株式・保険等の相続手続き、相続放棄などの相続発生後の手続きまで。
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著者 司法書士 早瀬 和海
日吉司法書士事務所
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